こんにちは!ガルマネ編集部です。

有名私立大学に在籍していたAさんは、大学2年のときに友人に誘われて体験入店。大学生活をおろそかにしないために、週2回という条件のもと、キャバ嬢として働きはじめます。

そこで出会ったのは、個性豊かなお客さんや女の子たち。「お金だけじゃない、キャバクラでしか見られなかったものがある」――彼女は自分のプライベートを包み隠さず、「素」の自分で一人ひとりに誠意をもって接客しつづけるうちに、いつしかナンバーワンにまで上り詰めたのです。

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キャバ嬢デビューから10か月、意図せずしてナンバーワンに!

Aさん:勤めはじめて10か月くらいしたころ、ナンバーワンになったんです。私の働く店はポイント制だったのですが、いつのまにか指名がたくさんもらえるようになって、同伴出勤も増えていて。キャストの女の子のなかには、水商売専門の子も多くて、すごく美人な子や、美容にとても気を使っている子、整形している子もいたのですが、そんな彼女たちを抜いて週2回出勤の私がナンバーワンになってしまったのですから、風当たりはずいぶん強くなりました。

私は「キャバ嬢」という仕事にとりたてて熱意を持っていたわけではなく、こだわりといえば「素を見せる」ということくらいでした。それもこだわりというか、「お客さんに対して嘘をつくのが面倒だったから」と言ったほうが正しいかもしれません。

たとえば、あるお客さんに対してなにか嘘をつくと、その嘘をずっと貫きとおさなければならなくなる。その嘘を隠すためにまた嘘をついて、ほかのお客さんにも嘘をついて……といったように、どんどんがんじがらめになる。そんな面倒なことをするよりは、初めからほんとうのことを言ったほうがいい、と思ったんです。

それに、わざわざ私を指名してくれるお客さんに嘘をつくのは、なんだか悪いような気がしました。これは先にもすこし言いましたが、お客さんは私と話すために高いお金を払って来店し、指名してくれる。そこには、「こんな話を聞いてほしい」「こう接してほしい」といった希望があるわけで、それは、「普段はだれにも言えない本当の自分を認めてほしい」という気持ちの現れのように思えました。

「売れたい」「ナンバーワンになりたい」といったことはぜんぜん考えなかった私ですが、「そんなお客さんの気持ちにちゃんと応えたい」という気持ちだけは持っていたんだと思います。

「頑張りすぎない」「無理しない」――ほどよい「適当」が成功のカギ

キャストの女の子に恋をしている人、娘みたいに扱いたい人、自分の自慢話を聞いてほしい人、趣味の話で盛り上がりたい人……。お客さんのいろいろなニーズがあって、それに応えるいろいろな女の子がいます。その女の子だけの「価値」があって、その価値を求めるお客さんがいる。

市場社会でいう需要と供給の関係ですが、私がナンバーワンになれたのは、私という女の子の価値を求めるお客さんが、そのときたまたま多かったからじゃないのかな、と考えています。

私のような考えをもつキャストは珍しいようで、もちろん、「キャストは自分の価値をひたすら高め、お客さんの需要に合わせる努力をして、より多くの指名につなげるべき」と考える女の子もいました。その点、私はあまり頑張らなかったというか、適当だったのかもしれません。

彼女からすれば、私はさほど努力をせずにナンバーワンになったように見えて、疎ましく思われていたかもしれませんね。私なりに頑張っているつもりでしたが、たとえば「メールはすぐに返信する」など、最低限の努力でした。私の生活のメインは、あくまで大学生活だったので、この「頑張りすぎない」というところが功を奏し、ナンバーワンになれたのかもしれません。無理をしても、いいことはないでしょうから。

「個人の価値」が尊重され、「評価」と「報酬」に直結しうる場所

だから、いろいろな考えの女の子がいていいのだと思います。ただ「男の人にちやほやされたい」という理由で働く子もいれば、「キャバ嬢こそが生きる手段」という確固たる信念をもって働く子もいて、私のようなタイプを求めるお客さんもいれば、「ほかの子がいい」というお客さんもいる。女の子それぞれの価値が、それぞれのかたちで認められるというのは、「キャバ嬢」という仕事ならではの特長なのではないでしょうか。

キャバクラは基本的に個人戦で、チームワークが求められるわけではありません。もちろん、団体客の場合には、複数の女の子で接客することもありますが、私が働いていたお店は、ひとりで来店するお客さんがほとんどでした。

そうそう、この「個人裁量が大きい」というところも、キャバクラで働いていてうれしかったことの一つです。それまでチェーン店のカフェでバイトしていたことは言いましたが、そこではチームワークが重視されるというか、「和気あいあい」といった雰囲気が求められる職場でした。

それに対してキャバクラでは、個々の価値が尊重され、個人に与えられる裁量の大きい職場です。カフェのバイトでの「仲良しごっこ」に辟易としていた私には、キャバクラの雰囲気のほうが、性に合っていたんです。

キャバクラでしか見られないもの、出会えた人……もう二度と得られない、「あのころ」の宝物

10か月勤めてナンバーワンになって、ふと「もういいかな」と思いました。お金はすでにたくさん貯まっていて、キャバクラに勤める前までの私には信じられないような額。お店でいろいろな人を観察するのは楽しかったけれど、そこで繰り広げられる光景は、いつも同じことの繰り返しのように思えて、「もう充分だ」と感じたんです。

ナンバーワンでしたので、店長には引き留められましたが、そもそも友人に誘われてなんとなく入店しただけですし、後ろ髪を引かれることはまったくありませんでした。最後の日は、盛大にやらせていただきました。お花がたくさん飾られて、指名してくれる常連さんがみんな来てくれて、うれしかったです。辞めてからは、もちろんお客さんにはいちども会っていませんが、懐かしいですね。

そのときに仲良くなったキャストの女の子とは、まだ付き合いがありますよ。彼女も当時は私と同じ「女子大生キャバ嬢」で、大学は違いましたがウマが合って、待機席でよくおしゃべりしていました。いまでもたまに飲みにいったりして、あのころを思いだします。彼女も私も、キャバ嬢を卒業して10年ちかく経ちました。いまではお互いに仕事や家庭があって、毎日充実していますが、考えることはふたりとも一緒。「いまの人生も楽しいけど、あの店で働いていたあのころって、ほんとうにおもしろかったよね」と。

Aさんは現在31歳。「優」が8割の成績で大学を4年で卒業し、某有名企業に就職。仕事に趣味にと毎日を楽しみながら過ごし、20歳代後半で結婚、現在は二児の母。「勉強が好き」と言っていた大学時代から、学問に対しての興味もいまだ失せないようで、現在は社会人大学院に通学。ちかぢか修士号を取得する予定です。

「無理はしたくない。でも、我慢はもっとしたくない」――そう語るAさんは、「キャバ嬢」という仕事によって、自分の「やりたいこと」と「欲しいもの」を我慢せずに追求しつづけ、実現させてきました。その結果としての「いま」がある。なかなか特殊な経歴を、明るくさらりと語る彼女は、溌剌とした魅力に溢れていました。

いかがでしたか?ガルマネ編集部では、今後も「女子大生キャバ嬢」の実情にフォーカスを当て、多種多様な彼女たちに徹底取材のもと、連載を予定しております。ひと口に「女子大生キャバ嬢」と言っても、その事情は人それぞれ。「キャバ嬢」の数だけ「理由」があって「ドラマ」があり、「悩み」があって「答え」があるのです。